日本在住のフランス人、ブノアさんが、独特の視点で日本を捉えたビデオレポートです。今回は、富山県高岡市、高岡銅器 momentum factory・Oriiをレポートします。
ビデオレポート
工芸品は美術品と同様、作品の歴史、職人の顔、メッセージ、手間など、作品の背景を知ってはじめて価値を見いだす。そしてその価値は感じる者によって様々である。
この旅で出会ったOrii氏、豊富な経験からの分かりやすい説明と、いくつかのデモンストレーションを受け、私は彼が生み出す作品が実用的で美しいだけではないことを理解した。
Orii氏のスタジオから生み出されるすべての作品には物語があり、その物語は非常に魅力的であった。革新と独創性を求めながらも、先祖の技術を大切に守っている職人との出会いは、私にとって非常に有意義な経験であった。
彼の作った時計は今もわが家で特別な時間を刻んでいる。(テニブ・ブノア)
高岡銅器 momentum factory・Orii
本州日本海側のほぼ中央部を占める富山県。高岡市はその北西部に位置し、17世紀初期以来の銅器製造の町として発展してきました。
その始まりは、この地を支配した前田利長が町の繁栄策として鋳物師7人を集めて工場を開設したことで、当初はおもに梵鐘や燈籠をつくっていました。
その後、次第に文具や香炉に花器や茶器、神仏具などジャンルを広げ、素材も鉄から始まり銅や錫、青銅、アルミなど多岐にわたり、さらに研磨や彫金、着色など加工技術の向上もあって美術工芸品としての地位を確立させました。
1975年には国の伝統工芸品に指定され、今では国内トップのシェアを誇る県の主要産業になっています。 銅器製造のプロセスは原型づくりに始まり、鋳造、仕上げ加工、そして着色へと進みます。ここでは工程ごとに厳密に分業化されていて、それぞれの分野で高い技術をもつ職人が腕を振るいます。溶かした金属を原型に流し込んで鋳造したあとは、砂を吹き付けるサンドブラストや研磨などの技法により仕上げ加工を行います。
最後の着色は銅本来の多彩な表情を引き出すための重要な工程で、彩色の素材として大根や糠、酢、梅干し、日本酒などが使われることもあります。これら成分の異なる素材による液体を塗布して焼き付け、化学反応を起こさせたり、腐食や錆を発生させて表面に様々な表情を描き出します。
この伝統技法にさらに創意工夫が重ねられ、厚さ1㎜弱の金属片の着色も可能になっています。 着色には保存の目的もありますが、それ以上に美術工芸品としての価値を生み出す工程で優れた感性が求められます。すべて色彩や模様は異なり、同じものは一つとしてつくれません。したがって、それぞれが世界で唯一の作品ということになります。
高岡銅器の大型作品としては像高7.5mの高岡大仏があり、市内中心部に鎮座し町を見下ろしています。(藤沼祐司)
Video footage: テブニ・ブノア
2003年、留学先のカナダで日本文化に出会い、日本に興味を持ち来日。来日後は日本に魅了され、日本の伝統文化、ポップカルチャーを世界に発信すべくブログを立ち上げ、現在はYouTubeを中心にありのままの日本を独自の視点で発信し続けている。現在は Ici Japon 株式会社を設立し、日本のお菓子のオンラインショップ、日本の姿を伝えるYouTube、Made in Japanのアパレル販売など、様々な角度から日本の魅力を世界に広めている。プライベートでは、日本人女性と結婚し、3児の父として奮闘している。
Text: 藤沼裕司 (ふじぬま・ゆうじ)
フリー編集者、記者。動植物、自然、歴史文化を主なテーマに活動。