まなびジャパン

  • English
  • Chinese
  • Korean
  • Spanish
  • 
  • 
ニュースNews
自然Nature
文化Culture
芸術Art & Design
特集Features
行事Life and Events
食と産物Food
匠の技Great Masters
旅先Destinations
世界遺産World Heritage
暮らしLifestyle
VideoVideo

旅先

江戸から続く、自由さと文化を見極める目。
文豪に愛された古き良き旅館スタイルを守る。

Text : 村田保子 / Photo : 菅原孝司

キーワード: 軽井沢宿 / 軽井沢「つるや旅館」 / 旧軽井沢銀座通り / ショー記念礼拝堂

400年の歴史を刻む

つるや旅館の通路に飾られた明治時代の軽井沢の全景。旅館が並ぶ旧軽井沢銀座通りに「ツルヤ」の文字が見える

「つるや旅館」は、江戸時代初期に中山道の軽井沢宿で休泊茶屋、旅籠として開業し、400年にわたり宿を営んできました。

当代主人は小峰弘敬さん。

「軽井沢は幕府が直轄で治めていた村。藩に属していなかったので、茶屋や旅籠の主人は、道中手形を切ったり、非常時の武器を預かるなど、重要な役割を任され、大きな権限を持っていました。だから宿場町全体に活気や主体性があって、新しいことを受け入れていく自由な雰囲気があったのだと思います」

碓氷峠の登り口にあった軽井沢宿、沓掛宿、追分宿は、峠越えを終えた客や、朝立ちして峠を越える客でにぎわい繁栄していました。活況を呈し、自由な雰囲気を謳歌していた軽井沢宿ですが、やはり幕末になると次第に廃れて、江戸以前の寒村に戻ってしまいます。

旧軽井沢銀座通りに面した「つるや旅館」。間口の広さは、旅籠時代に馬やかごを停めるためスペースを設けていた名残
レトロな雰囲気のロビー。ゆったりとくつろげる空間だ
柔らかい日差しが差し込む部屋で、ここで過ごした文豪達に思いを馳せる

宣教師ショーの来訪

その後、軽井沢の救世主になったのが宣教師のショーですが、実はショーに別荘を斡旋したのが、その当時の「つるや旅館」主人、佐藤仲右衛門でした。これが軽井沢における別荘の第一号です。

「その当時、外国人に家を提供して近所に住まわせるなど、常識では考えられないことでした。これは仲右衛門や軽井沢の人が偏見のない自由な心を持っていたからできたこと。ショーを外国人としてではなく、文化を共有できる〝人〞として見たのです。この人や文化を見る目、受け入れる懐の深さに、軽井沢がリゾートとして発展した理由があります」

なお、「つるや旅館」のすぐ近くにあるショー記念礼拝堂は、軽井沢最古の教会です。

つるや旅館のすぐ近くにあるショー記念礼拝堂は、軽井沢最古の教会

文人たちの心を捉えた宿

その後、外国人が使いやすいように客室をアレンジしながらも、日本旅館の形態を守り続けた「つるや旅館」は、文人、学者、実業家などに好まれるようになります。

島崎藤村、芥川龍之介、永井荷風、室生犀星、堀辰雄などが滞在し、文人たちの溜まり場となっていきました。

「つるや旅館」が培った人や文化を見極め、受け入れる懐の深さが、文人たちの心を捉えたのでしょう。彼らと交流があった、歌舞伎役者の2代目市川左団次も「つるや旅館」の離れに別荘を建てて逗留しました。その別荘が現在の「つるや旅館」の奥館です。大正時代に建てられた建物が、当時のままの姿で残っています。

つるや旅館で、江戸から明治、大正へと受け継がれてきた、宿場としての軽井沢の物語に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

通路の壁に飾られた「つるや旅館」で過ごす文人たちの写真。リラックスした様子が伝わる
市川左団次の別荘だった奥館(P56上の写真も同様)。大正時代のままの姿で残っている

(雑誌YUCARI掲載記事)


つるや旅館

長野県北佐久郡軽井沢町旧軽井沢678

☎0267・42・5555

URL⇒http://www.tsuruyaryokan.jp/

 

Text: 村田保子

Writer and Editor

Photo: 菅原孝司 (すがわら・こうじ)

Photographer

  • Share
  • Tweet

こころに残る旅の宿 。 軽井沢の歴史と共に歩む、軽井沢「つるや旅館」

[ 旅先 ] こころに残る旅の宿 。 軽井沢の歴史と共に歩む、軽井沢「つるや旅館」

Text : 村田保子 / Photo : 菅原孝司

キーワード : 軽井沢宿 / 軽井沢「つるや旅館」 / 旧軽井沢銀座通り / ショー記念礼拝堂

関連記事

京都旅ル。—広沢池—
谷口 哲

自然とテクノロジーの融合美 日本ダム百景 vol.8 丸沼ダム

注目記事
  • 特集

    民俗学者、新谷尚紀先生に聞く「生活の中にある日本の歴史=新しい民俗学の世界」

  • 文化

    日本の家、基礎知識。各部の呼び名、その由来と役割

  • 文化

    【Did you know…?】 古典文学に見る花に託した日本人の想い。

  • 特集

    400年間守り継いだ城を次世代に残す“最後の姫”。犬山城第12代城主・成瀬正俊の長女、成瀬淳子さん

  • 自然

    【にっぽん列島 野鳥たちの暮らし】6 大空のスピード王「ハヤブサ」

  • まなびジャパン フォトアルバム 1
  • シダックスグループ・オフィシャルサイト
  • Seven Oaks
  • まなびジャパン
  • シダックスグループ
  • 広告掲載&各種サポートのご案内
  • 編集・運営
  • 著者一覧
  • お問い合わせ
  • サイトポリシー
  • 会社概要

Copyright© Shidax Co Ltd., All rights reserved