【話題の本】島村恭則著『みんなの民俗学』ヴァナキラーってなんだ?(平凡社新書)
民俗学が田舎の風習を調べるだけの学問というのは誤解だ。
キャンパスの七不思議やわが家のルール、喫茶店モーニングやB級グルメといった現代の日常も、民俗学の視点で探ることができる。
本書ではこれらの身近なものをヴァナキュラーと呼んで「現代民俗学」の研究対象とした。
発祥の経緯やその後の広がりを、数々のユニークなフィールドワークで明らかにする。
まなびジャパン読者には一読の価値がある。
■発行:平凡社
■判型/頁:新書版/271ページ
■本体:880円+税

島村恭則
1967年東京生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。博士(文学)。
現在、関西学院大学社会学部・大学院社会学研究科教授。
世界民俗学研究センター長。
専門は,現代民俗学、民俗学理論。
著書に『民俗学を生きる』(晃洋書房)、『<生きる方法>の民俗学』(関西学院大学出版会)、
『日本より怖い韓国の怪談』(河出書房新社)、『文化人類学と現代民俗学』(共著・風響社)
編著に『引き揚げ者の戦後』(新曜社)、『民俗学読本』(共著・晃洋書房)などがある。
————
【内容】
序章 ヴァナキュラーとは〈俗〉である
1.私と民俗学
お祈り癖/ごみ収集車の調査/死が怖い/民俗学と出会う/沖縄に行く/韓国で暮らす/日本での研究
2.民俗学とはどのような学問か?
民俗学はドイツで生まれた/対覇権主義の学問/日本の民俗学
3.ヴァナキュラー
ヴァナキュラーとは?/フォークロアからヴァナキュラーへ/民俗学は現代学
———–
<第1部 身近なヴァナキュラー>
■第1章 知られざる「家庭の中のヴァナキュラー」
お母さんが創り出した化け物/気仙沼の海神様/わが家だけのルール
靴のおまじない
■第2章 キャンパスのヴァナキュラー
関学七不思議/キャンパス用語/運動部の曲がり角の挨拶
「こんにちはです」/目覚ましは「ごみの歌」
■第3章 働く人たちのヴァナキュラー
1.消防士のヴァナキュラー
アメリカの消防署/消防うどん/消防めし
2.トラックドライバーのヴァナキュラー
トラックドライバーの挨拶/CB無線での会話
3.鉄道民俗学
駅の池庭/段四郎大明神/特急「はと」と青葉荘/切符売りおばさん
4.水道マンのヴァナキュラー
5 裁判官にもあるヴァナキュラー
裁判官の口頭伝承/「伝承」と民俗学
6.OLの抵抗行為
——
<第2部 ローカルとグローバル>
■第4章 喫茶店モーニング習慣の謎
1.日本各地のモーニング
愛知県豊橋市/名古屋市/愛知県一宮市/大阪府東大阪市/大阪市生野区
大阪市西区/兵庫県尼崎市/神戸市長田区/広島市中区/愛媛県松山市
2.アジアの「モーニング」
香港は飲茶/ベトナムはフォーやソイ/プノンペンはかゆ
バンコクはいつも外食/シンガポールのセルフカフェ
3.モーニングをめぐる考察
なぜ行われるのか?/日本での分布/モーニングの歴史
アジアの中のモーニング/「ヴァナキュラーな公共圏」 としてのモーニング
■第5章 B級グルメはどこから来たか?
引揚者の円盤餃子/じゃじゃ麵/別府冷麵/遠野のジンギスカン
芦別のガタタン/室蘭のやきとり/みそ焼きうどん/モーレツ紅茶
■第6章 水の上で暮らす人びと
香港の水上レストラン/家船の暮らし/行商船と運搬船/家船の陸上がり
艀乗りからバスの運転手へ/かき船/かき船の陸上がり/ロンドンの運河と水上生活者
■第7章 宗教的ヴァナキュラー
1.パワーストーンとパワースポット
パワーストーンを信じるか?/個人的パワースポット
2.フォークロレスクとオステンション
ぼんぼり祭り/肘神様/アマビエ・ブーム
3.グローバル・ヴァナキュラーとしてのイナリ信仰