太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。
小雪 しょうせつ
緑の葉が秋を迎えて黄色や赤に姿を変え、そして散っていく。紅葉は役目を終えた葉の散り際の輝きであり、春の桜とともに日本らしい風景の代表です。
紅葉は、なぜ起こるのでしょうか。
元気な植物の葉は緑色をしています。これは緑の色素であるクロロフィルが光を吸収しているから。植物が光合成するのにはクロロフィルはなくてはならない色素ですが、ひと夏働いた落葉樹の緑の葉は秋になり気温が下がってくると活動を停止し、葉を落とす準備を始めます。この時クロロフィルの分解も始まり、隠れていたカロテノイドという色素が現れて黄色が目立つようになります。また、赤く色づくのはアントシアニンという赤い色素が新たに作られるからだとか。
鮮やかに色づく木々の美しさに目を見張りながら、同時に時の流れや命の儚さまで感じてしまう……。紅葉を愛でる、という日本人の心情は、自然が穏やかで四季が明確な日本の風土が育んできたものなのです。
二十四節気「小雪」七十二候
小雪【初候】第五十八候・11月 22日〜 虹蔵不見 にじ かくれてみえず
小雪【次候】第五十九候・11月27日〜 朔風払葉 きたかぜ このはをはらう
小雪【末候】第六十候・12月 2日〜 橘 始 黄 たちばな はじめてきばむ

イラスト:ナンキンハゼ(Triadica sebifera)=トウダイグサ科ナンキンハゼ属の落葉高木。丸みを帯びたひし形の葉が愛らしく、秋の紅葉は見事。5−6月に黄色の花が咲き、秋に黒い実がなりそれがはじけて、中に脂肪に富んだ白色の蝋状物質に覆われた種子が3個できる。落葉後もそのままの状態を保つので、白い星を散らしたようで美しい。
Piano: 水城雄
1957年、福井県生まれ。東京都国立市在住。作家、ピアニスト。音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。
Illust: 朝生 ゆりこ (あそう・ゆりこ)
イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部油画科卒。雑誌、書籍のイラスト、挿画などを多く手がける。 https://y-aso.amebaownd.com