太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。
秋分 しゅうぶん
二十四節気も3分の2が過ぎました。秋分は春分と同じく昼と夜の長さがほぼ等しい日で、この日を境に夜が長くなっていきます。
天高く空も澄み、夜も冴えざえと美しい季節になりました。旧暦では、7、8、9月が秋、その真ん中の8月15日を「中秋」と呼び、この夜に見える月のことを「中秋の名月」といいます。またの名を「十五夜」、そして旧暦9月13日を「十三夜」といって、両夜に月見を行うのが古くからの習わしです。
中秋の月を鑑賞する風習は平安時代に中国から伝わりました。貴族たちは船の上で詩歌や管弦に親しみつつ酒を酌み交わし、盃や水面に映る月を愛でていたとのこと。
江戸時代になると、月見は庶民にも広まりますが、中秋の頃は稲や作物の収穫時期と重なるので、豊かな実りに感謝し祝う、という意味合いが強かったようです。こうしたことから中秋の名月は「芋名月」とも呼ばれ、十三夜の月を「栗名月」「豆名月」と呼びます。お月見ではススキと月見団子に、里芋、栗、豆など、この時期に収穫された農作物をお供えし、豊作に感謝するのはその名残です。
2020年の十五夜は10月1日、十三夜は10月29日。秋の夜長、風流に月見の宴を催してはいかがでしょうか。
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二十四節気「秋分」七十二候
秋分【初候】第四十六候・9月22日 雷乃収声 かみなりすなわちこえおさむ
秋分【次候】第四十七候・9月28日 蟄虫坏戸 むしかくれて とをふさぐ
秋分【末候】第四十八候・10月3日 水 始 涸 みず はじめて かる

イラスト:ヒガンバナ(Lycoris radiata)=リコリス属の仲間で、彼岸の頃に突如茎を伸ばし、先端に強く反り返った鮮やかな紅色の花を咲かせる。花が終わると葉が伸びて緑のまま越冬し、他の植物の葉が茂り始める初夏に枯れて地上部がなくなる。彼岸の時期に合わせたかのように咲くことから名付けられた。別名の曼珠沙華(マンジュシャゲ)は有名だが、他にも地方によって驚くほど多彩な呼び名がある。花のある時には葉がないことから「葉見ず花見ず」の別称もあり、韓国ではサンチョ(相思華)と呼ばれ、「花は葉を思い、葉は花を思う」という意味がある。
Piano: 水城雄
1957年、福井県生まれ。東京都国立市在住。作家、ピアニスト。音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。
Illust: 朝生 ゆりこ (あそう・ゆりこ)
イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部油画科卒。雑誌、書籍のイラスト、挿画などを多く手がける。 https://y-aso.amebaownd.com