太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。
白露 はくろ
電線に留まるツバメのさえずりを聴くと、夏が近い、と感じます。そして空高く舞うツバメの姿がいつの間にか見えなくなると、秋になったのだな、と思います。
ツバメは北半球に広く分布する渡り鳥で、冬はフィリピンやインドネシア、マレーシアなどの南方で過ごし、春になると日本などに飛来します。そして人家や建物の屋根下などに巣作りし、ヒナを育て、秋になるとまた南に飛んでいきます。その飛行距離、およそ2000〜5000km!
そんな危険を冒して、ツバメはなぜ、渡りをするのでしょう? 南の国は気温が高い状態がずっと続くので、ツバメの餌となる虫の獲得競争が激しいのですが、四季のある日本では、冬の間眠っていた地表の有機物が豊かな栄養源となって、気温が上がる春に虫が大量に発生します。繁殖のために場所を移動するほうが、種の繁栄のために有利なのです。
七十二候・白露の末候は「玄鳥去(つばめ さる)」、行く夏とツバメの姿を見送りつつ、深まる秋を楽しみましょう。
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二十四節気「白露」七十二候
白露【初候】第四十三候・9月7日 草 露 白 くさの つゆ しろし
白露【次候】第四十四候・9月12日 鶺 鴒 鳴 せきれい なく
白露【末候】第四十五候・9月17日 玄 鳥 去 つばめ さる

イラスト:ジュズダマ(Coix lacryma-jobi)=熱帯アジア原産のイネ科の多年草。雌雄同株で、上部の葉の脇からたくさんの花補を立てる。硬く艶のある壷状の苞鞘のなかに雌花穂があり、その先に雄花穂が垂れ下がる。秋になると苞鞘が黒、褐色、灰色。白色などに色づき、これに糸を通して数珠のようにして遊んだことから名の由来となった。
Piano: 水城雄
1957年、福井県生まれ。東京都国立市在住。作家、ピアニスト。音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。
Illust: 朝生 ゆりこ (あそう・ゆりこ)
イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部油画科卒。雑誌、書籍のイラスト、挿画などを多く手がける。 https://y-aso.amebaownd.com