太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。
処暑 しょしょ
日本には五節句や二十四節気のような中国伝来のものだけではなく、生活文化、特に農作業などと密接に関わる日本独自の「雑節」という暦日があります。その一つである「二百十日(にひゃくとおか)」は、立春から数えて210日目、毎年9月1日ごろにあたります。
現在のようには気象予測が容易でなかった時代、夏の終わりともなると、海は荒れ、作物に甚大な被害が及ぶ台風がやってきます。過去の経験から、農家や漁師にとって油断ならないこの日を恐れて警戒し、「厄日」として戒めるようになりました。そして風を鎮める「風祭」を行って収穫の無事を祈るようになったのです。
こうした風祭は全国に残っています。特に有名な越中八尾「おわら風の盆」は9月1日から3日間、哀調の音色を醸す胡弓の調べに乗って、美しい街並みの中で艶やかな女舞、勇壮な男舞が舞われます。
宮澤賢治の「風の又三郎」は、そんな9月はじめの約10日間を描いた物語。吹き抜ける風の後には、いっそう高くなる秋空にすじ雲が見えることでしょう。
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二十四節気「処暑」七十二候
処暑【初候】第四十候・8月23日 綿 柎 開 わたのはなしべ ひらく
処暑【次候】第四十一候・8月28日 天地始粛 てんち はじめてさむし
処暑【末候】第四十二候・9月2日 禾 乃 登 こくものすなわちみのる

イラスト:ザクロ(Punica granatum)=ミソハギ科ザクロ属の落葉小高木で鑑賞も兼ねて果実も楽しむ果樹。西南アジアや中東が原産といわれ、初夏にオレンジの花が咲き、秋には10cm前後の球体の実がなる。充分に熟すと厚みのある果皮が割れ、ぎっしりと詰まったルビー色の小さな実の溢れ出すさまが美しい。
Piano: 水城雄
1957年、福井県生まれ。東京都国立市在住。作家、ピアニスト。音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。
Illust: 朝生 ゆりこ (あそう・ゆりこ)
イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部油画科卒。雑誌、書籍のイラスト、挿画などを多く手がける。 https://y-aso.amebaownd.com