太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。
啓蟄 けいちつ
日本みつばちを飼っていたことがあって、さまざまな原因で残念ながら逃去してしまったのだが、もともとの虫好きがみつばち活動とともにさらに関心が高まった。
虫好きならここ10年から20年のあいだに虫の種類や数が激減していることを実感しているし、そのデータも示されている。
虫は農薬や殺虫剤、都市開発など、さまざまな要因で大きな影響を受ける。
虫が生きられない世界に私たちヒトは生きられるだろうか。そもそも幸せだろうか。
春になると虫たちが土のなかから這いでてくるように、私たちも物質文明という土のなかから目を覚まして、豊かな世界で羽をのばしたい。(水城ゆう)
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啓は「開く」、蟄は「隠れる、閉じこもる」、土の中で冬眠していた生き物たちが春の訪れを感じて目覚め、動き始めるという意味です。この時期は大気が不安定となり、雷が鳴ることがあります。立春後初めての雷を「虫出しの雷」といい、啓蟄の頃に虫たちの目覚めを即し、春の到来を告げているのです。
七十二候 啓蟄初候・3月5日 蟄虫啓戸 すごもり むしとをひらく
七十二候 啓蟄次候・3月10日 桃 始笑 もも はじめてさく
七十二候 啓蟄末候・3月15日 菜虫化蝶 なむし ちょうとなる
イラスト:コブシ(Mangnolia praecocissima) モクレンの仲間で、集合果が拳に似ていることから付いた名前。早春の山野を白い花で彩り春の訪れを告げる。
Piano: 水城雄
1957年、福井県生まれ。東京都国立市在住。作家、ピアニスト。音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。
Illust: 朝生 ゆりこ (あそう・ゆりこ)
イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部油画科卒。雑誌、書籍のイラスト、挿画などを多く手がける。 https://y-aso.amebaownd.com