太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。
雨水 うすい
我が故郷では全国的にも有名らしい左義長祭がこの時期にある。市街地に櫓がいくつもならび、派手な女ものの襦袢を羽織った男や子どもたちが太鼓をいせいよく叩き、お囃子もにぎやかだ。河川敷ではどんどん焼きがたかれる。火の祭なのだ。
雪国でも雪の時期は終わりだが、この祭の日になるとかならず吹雪いて寒くなるというジンクスがある。今年は暖冬で雨降りだった。
春を予感させる雨は、しかしまだ冷たく、希望とともに長い冬の暗い記憶を引きずっている。(水城ゆう)
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降る雪が雨へと変わり、厚く積もった雪が解け始まるころ、潤いを取り戻した大地が春への準備を始めます。明るく柔らかな日差しに霞がたなびき、草木が芽吹き始め、新たな生命の発露を感じる季節。南からウグイスの鳴き声も聞こえ始め、朝夕の冷え込みも弱まって、朧月を仰ぎ見る夜もそう遠くありません。
七十二候 雨水初候・2月19日 「土脉潤起」 つちのしょう うるおいおこる
七十二候 雨水次候・2月24日 「霞 始靆」 かすみ はじめてたなびく
七十二候 雨水末候・2月29日 「草木萠動」 そうもく めばえいずる
イラスト:ツバキ(Camellia japonica)
古くから庭木として親しまれる、日本を代表する照葉樹。冬から早春にかけてさまざまな品種が咲き誇る。海外でも大変人気が高い。
Piano: 水城雄
1957年、福井県生まれ。東京都国立市在住。作家、ピアニスト。音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。
Illust: 朝生 ゆりこ (あそう・ゆりこ)
イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部油画科卒。雑誌、書籍のイラスト、挿画などを多く手がける。 https://y-aso.amebaownd.com