太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。
立春 りっしゅん
北陸の田舎から東京に仕事場を移したのは20世紀が21世紀に変わろうかというころだったが、おどろいたのは近所の公園を歩けば梅が咲き、ふくよかな香りのなかを、シナモン文鳥を肩にとまらせたご婦人がにこにこと散歩している光景だった。
立春というと北陸の山間部ではもっとも雪が深い。たれこめた雲の下、まだ真っ暗な夜明けの時刻から、玄関前の雪かきに追われる。
それでも日は一日一日と長くなりつつあるのを感じて、たまった疲れも先の希望が見えてくる。
近年は雪のないことも多い。梅はこちらでもあちらでも時間差でほころびていく。(水城ゆう)
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暦の上で春が始まる日。旧暦では1年の始まりとなり、季節の節目はこの日が起点となります。前日には豆をまいて邪を払い、福を呼び込む行事・節分が行われます。節分はかつて季節の分かれ目のことをいい四季それぞれにありましたが、現在は立春の前日のみを指します。厳しい寒さのなか、春の気配が漂いはじめ徐々に日脚が伸びていきます。
七十二候 立春初候・2月4日 「東風解凍」 はるかぜ こおりをとく
七十二候 立春次候・2月9日 「黄鶯睍睆」うぐいす なく
七十二候 立春末候・2月14日 「魚上氷」うお こおりをいずる
イラスト:マンサク(Hamamelis japonica)
2月から3月に、葉に先駆けて花が咲き、いち早く春の訪れを告げる花木。名は「まず咲く」「真っ先」が変化したとも、「万年豊作」に由来するともいわれる。
Piano: 水城雄
1957年、福井県生まれ。東京都国立市在住。作家、ピアニスト。音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。
Illust: 朝生 ゆりこ (あそう・ゆりこ)
イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部油画科卒。雑誌、書籍のイラスト、挿画などを多く手がける。 https://y-aso.amebaownd.com