四季の巡りと暮らしの節目に、人々は神に祈り、祭りを行う。
その人々の熱き心、ほとばしる想いの瞬間を、写真家・森井禎紹が切り取ります。
今回は11月の祭り 百石踊り、稲穂祭、文化文政風俗絵巻之行列を紹介します。
百石踊り(兵庫県三田市)
各氏子が、その年に収穫したもち米で作った小餅を神前に供え、神主が五穀豊穣や家内安全の祝辞を唱えるといった一連の儀式が行われます。
午後1時頃から新発意(しんぼち)と呼ばれる法衣を着た大親法(おおしんぼ)・小親法(こしんぼ)を始め、太鼓踊り子、旗踊り子、鉄砲方、鬼、山伏、笠幕持ち、幟持ちなどにより構成される百石踊りが始まります。
百石踊りは、文亀3年に起こった大干ばつの時、元信という遊行僧が八幡神に雨乞いを祈願したところ、雨が降り、その返礼のため踊られたことに由来します。
この踊りを奉納するのに米百石分の費用がかかったことから、この名前が付いたと言われています。
・開催日:網園11月23日
・開催地:兵庫県三田市神本庄駒宇佐八幡神社
・問い合わせ:三田観光協会 TEL:079-561-2241


稲穂祭(山口県下松市)
「きつねの嫁入り」で知られる稲穂祭りは、ユニークな祭りです。
享保9年のある夜、住職の夢枕に白狐の老夫婦が立ち、「私たちはツムラガ森」で往生した白狐です。私たちを人様と同様に亡骸を葬り、畜生道から解脱できるように願いをかなえてくださるなら、私たちの法力をもって「和尚さんの失われた数珠を手元にもってきて、寺や里人もお守りしましょう」と言って消えました。
住職が目を覚ますと、枕元に数珠があり、早速、寺男と共に告げられた場所に行くと二匹の白狐が大往生していた。その二匹を、墓も建て戒名も付けて手厚く葬った、という言い伝えがあります。
昭和25年秋に、第1回稲穂祭りが開催され、その催しの一つとして「狐の嫁入り」が誕生しました。主役は白狐の新郎新婦で仲良く並んで人力車に揺られ、後に紋付き袴の親族やお供が続く。
・開催日:毎年11月2、3日(本祭)
・開催地:山口県下松市花岡福徳稲荷神社
・問い合わせ:福徳稲荷神社 TEL:0833-43-4500


文化文政風俗絵巻之行列(長野県南木曽町)
江戸から数えると中山道42番目の宿場で、木曽の宿場の中でも最も保存が長く、家並みが残されている妻籠宿です。
この行列は妻籠宿の保存事業で始まったのを記念して行われるようになった。地元の住民や県外からの多くの人が参加しての行列です。
武士、浪人、鳥追い女、駕籠下記かき、飛脚、虚無僧などなどに分して、文化文政の宿場の風俗えお再現します。
行列の中でも長持ち唄につれて、木曽馬に乗った花嫁、仲人、永道を担いだ一行は、山駕籠にのって子供達と共にひときわ人気があります。
昼食じには街道に面した板の間で腰を掛けて、わっぱ弁当を広げる者、竹の皮に包んだにぎり飯をほおばる者、キセルをふかす者などがいて、江戸時代にタイムスリップしたような錯覚に陥る。
午前10時30分、南木曾待ち総合グラウンドを出発し旧中山道を歩く。
・開催日:11月23日
・開催地:長野県南木曾町妻籠宿
・問い合わせ:南木曾町づくり推進課 TEL:0264-57-2001



Photo & Text: 森井 禎紹 (もりい・ていじ)
写真家。1941年生まれ。兵庫県三田市出身。1964年頃より趣味で写真を始める。写真コンテスト、カメラ雑誌月例コンテストに応募、入選回数362回を数える。1990年プロに転向、ライフワークとして日本全国の祭りを取材。『祭りに乾杯』『祭り旅』『祭り日』他多くの写真集を出版。現在、社団法人写真家協会(JPS)会員、一般社団法人二科会写真部常任理事、兵庫県写真作家協会最高顧問など。