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匠の技

日本では、古くから身近にある自然素材を利用して、日常生活の中で使われる多様な工芸品を生み出してきました。それらは、先人たちの巧みな技と知恵を使い手作りされたもので、その地域や気候風土に合った暮らしに密着する、欠くことのできないものでした。しかし、現代社会における生活様式の合理化や、安価な化学素材の利用が進み、多くが使われなくなり衰退してきています。
そこで国は「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」を定め、主として日常生活で使われるもの、製造過程の主要部分が手作り、伝統的技術または技法によって製造、原材料は伝統的に使用されてきたもの、一定の地域で産業として成立している、といった条件を満たしたものを「伝統的工芸品」として指定し、支援しています。

Text : 中澤浩明

キーワード: 匠 / 伝統工芸品 / 中国・四国

全国伝統的工芸品 その5 中国・四国

中国・四国地方の特徴

恵まれた自然を活かした、生活に密着した品々。

暖かな気候に恵まれた中国・四国地方では、原料となるコウゾやミツマタなどの植物の生育に適していたこともあり、和紙の生産が多く見受けられます。そのほかにも、陶器に適した土、硯や灯ろうづくりに適した石など、豊かな自然を活かしながら技術を積み重ね、庶民の生活に密着した木工や竹細工といった小物などの工芸品も生み出されています。

 

<鳥取>

弓浜絣(ゆみはまがすり)/因州和紙(いんしゅうわし)/出雲石燈ろう(いずもいしどうろう)※島根県の出雲石燈ろうと重複

弓浜絣は江戸中期から農家の副業として始まり、深い藍の地に幾何学文様をあしらい素朴でざっくりした風合いをもち、着物や暖簾などに利用されている。因州和紙の歴史は古く、起源は平安時代とされる。本格的な生産は藩の御用紙とされた江戸時代からで、書道、墨絵に適した紙である画仙紙、半紙など品質の高さには定評がある。出雲石燈ろうの原材は、地元で産出される凝灰質砂岩で、造園や室内装飾にも用いられる。しっかり詰まった石質のため、質の高い優美な燈ろうとして人気が高く、庭園や室内装飾、神社仏閣要として広く利用されている。

弓浜絣 写真提供:鳥取県商工労働部兼農林水産部 市場開拓局 販路拡大・輸出促進課

 

<島根>

石見焼(いわみやき)/石州和紙(せきしゅうわし)/雲州そろばん(うんしゅうそろばん)/出雲石燈ろう(いずもいしどうろう)※鳥取県の出雲石燈ろうと重複

石見焼の始まりは江戸中期、武骨な趣で大物陶器が多い。特に大型の水かめ(大はんどう)は独特のものとして知られている。石州和紙は平安時代に書かれた「延喜式(えんぎしき)」にその名が見られ、江戸時代後期に発刊された「紙漉重宝記(かみすきちょうほうき)」には「柿本人麻呂が石見の国で守護の仕事に就いていた時、民に紙漉(す)きを教えた」と記されている。虫害や水濡れに強く、強靭性と軽さと柔らかな肌ざわりを合わせ持っている。雲州そろばんは江戸後期に始まり、珠を均等に削るろくろの開発で操作性を高め生産量を増やした。珠と軸となる芯竹の仕上げに細心の注意を払い、堅牢で使いやすいそろばんとして知られている。

石見焼 写真提供:島根県物産協会

 

<岡山>

備前焼(びぜんやき)/勝山竹細工(かつやまたけさいく)

備前焼のルーツは古代の須恵器で、12世紀に本格的な生産が始まり日本六古窯の1つに数えられる。赤褐色で無釉(むゆう)の重厚な作風で、茶器や花器などがある。昭和に入り「備前焼の中興の祖」と言われた金重陶陽や藤原啓、山本陶秀が人間国宝の指定を受けている。勝山竹細工の起源は江戸末期、材料となるマダケをさらしや皮剥ぎを行わなずに編み上げ、家庭用や農業用のざるやかごなどを作る。素朴な中にも存在感があり、使いやすさと丈夫さには定評がある。

備前焼 写真提供:岡山県産業労働部 マーケティング推進室

 

<広島>

宮島細工(みやじまざいく)/広島仏壇(ひろしまぶつだん)/熊野筆(くまのふで)/川尻筆(かわじりふで)/福山琴(ふくやまこと)

宮島細工の起源は鎌倉初期、江戸末期には杓子(しゃくし)を始めとして、ロクロ細工、刳物(くりもの)細工、宮島彫りなど幅広く日常生活に使用されるものが多く製作された。木目の色調や手触りを生かした製品が多い。熊野筆、川尻筆は江戸時代に始まり、前者は毛筆や画筆、化粧筆などを製作、後者の製品は書道用といて有名。福山琴は江戸初期に始まる。最高級のキリ材を乾燥させ加工、精巧な装飾を施し、仕上げまでほとんどが手作業。優れた音色と木目の美しさが特徴。広島仏壇の始まりは江戸初期。紀州から移り住んだ飾り金具細工師や桧物(ひもの)細工師、塗師(ぬし)等の技術をもととしている。

熊野筆

 

<山口>

萩焼(はぎやき)/大内塗(おおうちぬり)/赤間硯(あかますずり)

萩焼は江戸初期の開陶。茶人に好まれその質朴な趣は侘びさびの具象化と評される。絵付けなどの装飾はほとんど行わずに、焼き締まりの少ない陶土を用いた、独特の柔らかな風合いが特徴。大内塗は大内氏全盛期の室町時代に始まり、一度途絶えたのち再興。秋草文様と大内家紋が特徴。大内朱の地塗りの上に、彩漆(いろうるし)で秋の草を描き、雲の形を描き入れ、家紋の大内菱を金箔で貼り付けた独特の文様。赤間硯の起源は鎌倉初期とされ、原石の赤間石は材質が硬く、緻密で美しい。江戸時代には藩の名産品として珍重された。

萩焼

 

<徳島>

阿波正藍しじら織(あわしょうあいしじらおり)/大谷焼(おおたにやき)/阿波和紙(あわわし)

阿波正藍しじら織は、明治初めに木綿の織物に改良を加えて始められた。シボという独特の凹凸が特徴で、縦糸と横糸の本数と組み合わせによる張力差により生み出されている。大谷焼は江戸中期に伝わり民窯として受け継がれた。水かめや鉢など大ものづくりが有名で、1人が横に寝てロクロを足で回し、もう1人が成形する「寝ろくろ」という独特の技法がある。阿波和紙は江戸中期以降盛んに生産され、明治時代には吉野川流域に500軒ほどの紙漉所があった。水に強く、破れにくく、独特の美しさをもっている。

阿波和紙 写真提供:徳島県観光協会

 

<香川>

香川漆器(かがわしっき)/丸亀うちわ(まるがめうちわ)

香川漆器は江戸前期藩主の奨励により始まり、その後、玉楮象谷(たまかじぞうこく)が中国伝来の漆塗技法とわが国古来の技法を加えて、新しい技法を生み出し確立された。丸亀うちわは江戸中期に四国の金毘羅参りのお土産として考案されたのが始まり。その後、財政再建策の一環として藩士の内職として広まった。柄と骨が1本の竹で作られているものが多く、現在では全国シェア9割を誇る。

香川漆器 写真提供:香川県商工労働部経営支援課 総務・地場産業グループ

 

<愛媛>

砥部焼(とべやき)/大洲和紙(おおずわし)

砥部焼は江戸中期、九州・肥前より陶工を招いて始まり、のち白磁の焼成に成功して発展した。大胆な筆使いの文様を青色で描いた染付や、天然の灰を使った柔らかい発色の青磁は実用的でしかも温かみがある。大洲和紙は江戸後期、藩の御用紙を漉かせたのが始まりで、生産、販売を統制して藩財政を潤した。強く保存性、耐久性に優れ、素朴な美しさをもっている。現在は障子紙、書道用紙のほか、ちぎり絵等にも使用されている。

砥部焼 写真提供:愛媛県経済労働部観光交流局 観光物産課

 

<高知>

土佐打刃物(とさうちはもの)/土佐和紙(とさわし)

土佐打刃物は江戸初期以降、林業に必要な打刃物の需要が拡大し、生産量・品質ともに格段に向上。江戸時代からの技術を継承し、形状や重さの異なる注文を受けても、原寸と形のみの注文書で製造ができ「土佐の自由鍛造」とも言われている。土佐和紙は、平安時代に書かれた「延喜式(えんぎしき)」に記載があり、この頃から生産が行われていた。江戸期に入って生産が盛んになり、明治時代中期には全国一の生産規模に。現在でも伝統技術を受け継ぎ生産が行われている。

土佐打刃物 写真提供:高知県土佐刃物連合協同組合

Text: 中澤浩明 (なかざわ・ひろあき)

群馬県高山村で雑誌&サイトなどの編集と農業を両立させる編集者。
ブログ『無農薬・有機でこめづくり』
www.diane-o.com

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【全国伝統的工芸品】 次世代につなぐ日本の手わざ その5 中国・四国

[ 匠の技 ] 【全国伝統的工芸品】 次世代につなぐ日本の手わざ その5 中国・四国

Text : 中澤浩明

キーワード : 匠 / 伝統工芸品 / 中国・四国

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