普段、私たちが当たり前に食べているお米ですが、その米づくりについては、田植えと稲刈りくらいしか知らないという方が多のではないでしょうか。そんな方たちに、米づくりに少しでも興味をもって持っていただこうと、ここでは、米作りの実際の作業の様子を、1年を通じてお伝えします。
レポートは、編集の仕事と農業を両立実践している『まなびジャパン』の編集スタッフでもある中澤浩明。彼は群馬県の高山村で、継承者がいず、手がつけられなくなった田んぼを借りて、小規模ですが無農薬・有機栽培で米づくりに取り組んでいます。
この記事で、お米への理解を少しでも深めていただければ幸甚です。
【米作り、1年間の作業行程】
5 水管理と雑草対策(6〜7月)
6 中干しから出穂(7〜8月)
7 稲刈り(10月)
8 稲刈り後の調整作業(10月)
籾のついた米が種になる
野菜や穀物などほとんどが、まずは種をまくことから栽培が始まります。
一般的に野菜は植物の葉や茎、根などを食べますが、穀物である米や麦は種を食べています。そう、普段食べているお米は稲の種です。知ってますよね。
稲はイネ科の一年草である植物のことをいい、その種が米です。稲と米、普段何気なく同じもののように言葉として使っていますが、正確に言うと「稲を育てて米を収穫する」ということになります。
米といえば、普段から食べている白米、もしくは玄米を見ることが多いと思います。しかし、稲の種となるのは玄米を包む籾のついた状態の種籾です。見たことあるでしょうか。
この種籾をまくことから稲の栽培は始まります。
余談ですが、米は収穫時にコンバインなどで稲を刈り取り、茎から種の部分を外す作業が「脱穀」。続いて、籾を取り去る作業が「籾すり」で、ここで玄米となります。さらに玄米を「精米」して、ようやく白米となります。「脱穀・籾すり・精米」この3ステップをお忘れなく(乾燥という工程もありますが、これは別の機会に説明します)。

種籾は自家採種を行っています。これは昨年作ったお米から種籾を取っておいて、それを今年の栽培に使います。
種籾の入手方法としては自家採種のほかに、もちろん種籾を購入することもできます。さらに、田植えができるまでに育った苗を購入するということもあります。
自家採種して種籾をまき、苗を育てるには手間もかかるので、自家用米と縁故米(親戚などに送る米)の分をつくるだけ、といったような小規模農家では、ほとんどが苗を農協などから購入しています。
脱芒(だつぼう)と選別
前置きが長くなりましたが、いよいよ種籾の準備作業となります。
脱穀を終えて自家採種した種籾には、「芒(のぎ・のげ)」と呼ばれるヒゲのようなものがついています。種籾をまくときにこのヒゲ状のものがじゃまになってうまくまけないので、このヒゲを取り去ります。この作業が脱芒になります。私たちのまわりでは「ヒゲ取り」なんて呼ばれています。

さらに、良質な種籾を選別する作業を行います。この選別作業、よく知られているのが「塩水選(えんすいせん)」です。これは種籾を一定の濃度の塩水に入れ、重く実の詰まった良質な種籾は沈み、軽い未熟な種籾は浮かぶ、という比重を利用した選別方法です。
しかし、自分は塩水選をしたことがありません。それはなぜかというと、脱芒と選別、2つの作業を同時にこなしてくれる機械があるからです。
この機械は、脱芒と同時に塩水選と同等の選別を行えるという便利なもの。その名も「だつぼー君」。これは自分が加入している組合のもので、借りて作業しています。
種籾を投入すると、まずはスクリュー状のものが回転することによって種籾をもみ、芒を取り去る脱芒と、網によって粒径選別(種籾の大きさで選別)するのを一度に行ってくれるのです。


このような機械を使うことで、短時間のうちに作業は完了。これで種籾が準備できました。
Photo & Text: 中澤浩明 (なかざわ・ひろあき)
群馬県高山村で雑誌&サイトなどの編集と農業を両立させる編集者。
ブログ『無農薬・有機でこめづくり』
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